「ブルーハーツできますか」って女子高生に言われた話のつづき
Photo by Camille Villanueva on Unsplash

先日のこの投稿にリアクションが多かったので書いてみました。

“昔。ひとりで路上弾き語りしながら曲を作ってたら制服着た女子高生が近寄ってきて。「ブルーハーツできますか」って聞かれたから情熱の薔薇やったんだ。話聞くと親が急にいなくなって、親が残したものの中にブルーハーツのテープがあって、それ聴いて頑張ってるって。俺も頑張ろうってすげえ思ったな。”

あれはいつ頃なんでしょう。THE BACK HORNのアルバム「ヘッドホンチルドレン」のネタ作りしてたような気がするんですが。そうなると2004年頃か。

あの頃自分は路上弾き語りスタイルで曲を作っていました。公開作曲というか、忙しく道行く人たちの足が止まるかどうかも基準にしながらひたすら曲を作ってはテープレコーダーで録音してたなあ。

弾き語りをしてると様々なひとが立ち止まります。そこから親友になるほどの出会いもありますが、ほとんどは一期一会。一瞬だけ人生が交わるような感覚でした。

21時か22時頃か。制服を着た女子高生に出会いました。

だいたい路上で弾き語りしてると地面のほうを見て意識は頭の中に行っているので誰かが近づいてきても顔を上げるようなことは無いのですが、その日は思わず顔を上げました。

近づいてきた靴がローファーだったこと。そして歌ってる最中に話しかけられたからです。

歌ってる最中、話しかけられることってほとんどないです。相手がめちゃくちゃな酔っぱらいか、警官かどっちかぐらい。だからびっくりしました。しかもわりと夜遅い時間に制服で歩いてることに心配というか、ん?ってなりました。

「ブルーハーツできますか」

THE BLUE HEARTS。自分がめちゃくちゃ影響を受けたバンドなのでもちろん演奏できる曲はありました。世代的には菅波より僅かに上の世代の音楽でもあったのでちょっと女子高生がセレクトするには大人なチョイスだなとは思いました。

訳ありな雰囲気を感じていた自分は、逆に質問などせず、すぐさま演奏をはじめました。

情熱の薔薇。自分が大好きな歌を選びました。

"永遠なのか本当か

時の流れは続くのか

いつまで経っても変わらない

そんな物あるだろうか"

彼女は顔にかかった長い髪をかき上げもせず、聴いていました。

菅波が歌い終わるとパチパチと拍手をして「ありがとうございます。。。いいですよね、この曲」と言いました。

「あの、あのですね。わたし」と、彼女は急くように唐突に話し始めました。曲の終わるのを待ってたぐらいの勢いで。

「親が、いきなり家からいなくなりまして。それで今ひとりで暮らしてて。部屋を片づけしてたらテープが出てきて。それにブルーハーツが入ってて、聴いて、頑張ってます」。

中腰というか、微妙な高さで態勢をキープしながら、それはきっと車の音にかき消されずに地べたに座ってる菅波に聞こえるように、早口気味で彼女がまくしたてた話。

その話に対して疑問も疑念も好奇心も、勝手に傷ついたような気持ちも一回飲み込んで自分は一言だけ返しました。

「大丈夫?」

次の言葉を言うとき、彼女はあまり早口ではありませんでした。

「あんまり大丈夫ではないですねー、でも頑張ります。へへへ」

置かれている状況か、自分の心が揺れ動いてることになのか、とにかく「へへへ」って彼女は笑いました。そして、

「ありがとうございました。頑張ってくださいー」とタクシーのライトで彼女はシルエットになりました。そして目の前が再び夜の暗さを取り戻した時にはもういなかったです。

もうちょっと言ってあげることあっただろうよって、めちゃくちゃモヤモヤしてその日はもう曲なんてできやしませんでした。それから二度と会うことはなかったです。いや、もしかしたらどこかですれ違ってるかもしれませんね。元気で生きていてほしい。

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